ルポ サラ金

巨大貸金「武富士」との1000日戦争


著者 三宅勝久(ジャーナリスト)
発売 2024年10月5日

判型 A5サイズ(224ページ)
仕様 ペーパーバック

定価 1,815円(税込)


サラ金「武富士」の闇に切り込む
中年ライターの地を這(は)うような取材秘録。

2003年、レオタード姿の女性がダンスするテレビCMでお馴染みの貸金業界ナンバーワン、経団連加盟の大企業を向こうにまわし、どれだけ「恫喝訴訟」をくり返されても一歩も引かず、債務者の過酷な「実態」と掘り出した「不祥事」を武器に全面対決!

《伝説のルポが、全面リメイクで復刊》


本文より

◆「新版のためのまえがき」から抜粋

「昨日のような今日」を過ごしているうちに社会は無残にも疲弊してしまった。

武富士は消滅したものの、そのあとにやってきたのは銀行系のサラ金、そして銀行本体が運営するカードローンだ。

「サラ金の帝王」武井保雄(武富士の創業者)の名は忘却されつつあるが、武井と同じ埼玉県深谷市出身の「銀行の父」渋沢栄一は、新一万円札の顔となり、この国に暮らす者の意識に深く刷り込まれようとしている。

武富士はなくなっても弱肉強食の収奪産業はなくならない。

むき出しの資本主義が、姿形を変え、あの頃よりもいっそう激しく跳梁跋扈をはじめた。

皮肉なことに、往年の武富士事件がいま、その現実を鏡のように映し出している。

◆「旧版のまえがき(二〇〇五年一一月三〇日)」の冒頭部分を抜粋

私は無名のフリージャーナリストである。五年間勤めた地方新聞社を辞め、上京したのが二〇〇二年の春。テレビのドキュメンタリー番組を作ったり、週刊誌にルポルタージュを書いたりしながら糊口をしのいできた。四〇歳、独身。年収三百万円以下。風呂なし、共同トイレ、四畳半一間の木造アパートに暮らす。

さえない中年男である私は、とあるいきさつで巨大企業から訴えられ「被告」となる。二〇〇三年三月、サラ金最大手の株式会社武富士は、雑誌『週刊金曜日』(株式会社金曜日)と私を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こした。賠償請求額は五五〇〇万円。武富士が “お客さま” から収奪する様子を描いたルポ「武富士残酷物語」が名誉毀損だというのだ。

この訴えを私は「くだらん記事を書くのはやめろ」というメッセージだと理解し、予定通りルポの連載を続けた。すると武富士は懲りずに、損害賠償の請求額を一億一〇〇〇万円に吊り上げた。


もくじ

新版のためのまえがき
・現代社会を映す鏡としての武富士事件

旧版のまえがき
プロローグ 支店長横領

第一章 紛争勃発
・ルポ 武富士残酷物語
・ルポ 武富士社員残酷物語
・届いた訴状
・ルポ 武富士「第三者請求」裁判
・訴え変更で「一億一〇〇〇万円」に

第二章 追及〈社員虐待 編〉
・盗聴された支店長
・「武富士レディ」涙のつま恋研修
・暴力幹部が出世する
・真正館「お付き」悲話
・暴露された罵声

第三章 追及〈借金地獄 編〉
・三時間取り立て事件
・暴かれた計算書改ざん
・どんぶり勘定事件
・「審判の日」の猛烈回収
・罵声会議の現場へ

第四章 巨像揺らぐ
・罵声会議の現場へ
・完全勝訴
・弱みに付け入る武富士商法
・控訴棄却、最高裁へ
・時効債権取り立て事件
・『朝日』が武富士に屈した日

第五章 決着
・最高裁第一小法廷

旧版のあとがき
追記 及川弁護士との対談
新版のためのあとがき


著者プロフィール

三宅勝久
(みやけや・かつひさ)

ジャーナリスト、ブログ「スギナミジャーナル」主宰。
1965年岡山県生まれ。フリーカメラマンとして中南米、アフリカの紛争地を取材。『山陽新聞』記者を経て現職。「債権回収屋G 野放しの闇金融」で第12回『週刊金曜日』ルポルタージュ大賞優秀賞受賞。

主な著書に『サラ金・ヤミ金大爆発』『悩める自衛官』『自衛隊員が死んでいく』『自衛隊員が泣いている』『絶望の自衛隊』(いずれも花伝社)、『債鬼は眠らず』『司法が凶器に変わるとき』『大東建託の内幕』『「大東建託商法」の研究』(いずれも同時代社)、『自衛隊という密室』(高文研)、『日本を滅ぼす電力腐敗』(新人物文庫)、『小池百合子と黒塗り文書』(若葉文庫)、『日本の奨学金はこれでいいのか』(共著、あけび書房)など。

近年は研究不正問題の取材に取り組んでいる。


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